総量規制対象外のカードローンはメリットだけでない
2010年から、貸金業法に総量規制というルールが加わりました。
これにより貸金業者は、利用者に貸すことのできる金額の制約を受けるようになったのです。
また同時に、この法律の適用を受けない総量規制外の貸金項目も決められました。
それではこれら総量規制対象外に選ばれた一部の貸金は、何の制約もないという意味で、お金を貸す金融機関にとっても、またお金を借りる利用者にとってもメリットだけなのでしょうか?
いえ、そうではありません、色々なデメリットもあるのです。
この記事では、総量規制対象外のカードローンを中心に、主にそのデメリットを解説。
またそのメリットをカバーするにはどんな方法があるのかまで含めて詳しく説明していきます。
そもそも総量規制とは?
総量規制とは、貸金業登録業者である貸金業者を融資の量の側面から制限する法律です。
総量規制とは2006年に発布され、2010年6月に完全施行された法律です。
まず総量規制の特徴を上げると以下の4点にまとめることができます。
- 申込者が総量規制を受けている貸金業者で借金ができる上限の金額は、貸金業者合計で本人年収の3分の1まで
- 希望借入額によって所得証明書(収入証明書)が必要な時がある
- 総量規制に係る借入は個人向け融資が対象(法人、個人事業主等は対象外)
- 規制を受ける対象者は個人に貸出を行う貸金業者のみ※(具体時には、消費者金融業者及びキャッシングを取り扱う信販会社・クレジットカード会社等)
※銀行法や信用金庫法で規制される銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫等、また個人向け保証業務を行う保証会社、割賦販売法で規制されるクレジットカード・ショッピング等は除かれる
総量規制が実施され社会が落ち着きを取り戻した貸金業界
ところでなぜ総量規制は実施されたのでしょうか?
ここでは総量規制が実施された背景とその後の結果について簡単に説明します。
総量規制が実施される以前、1980年代から2000年初頭までは、業者に対する規制も甘く、金融業者もイケイケドンドンの融資を行っていました。
そのため個人が複数の金融業者からお金を借り続けた結果、多重債務者が続出、最後にはバブルもはじけて、お金を返せない人がたくさん出る始末となりました。
債務者の中には自殺する人や家庭が崩壊する人まで出たので大きな社会問題になったのです。
そこで国としても、個人過剰貸付契約防止のために、やっと重い腰を上げて、貸金業者を対象に2006年から2010年にかけて総量規制を実施したわけです。
総量規制が実施された結果、過払い金請求への対応が必要になるなど、思いの外その影響は甚大で、多くの金融業者が廃業・倒産を余儀なくされました。
じつにピークには3万社あった貸金業者が、2019年3月末時点で1,716社社にまで落ち込んだわけですから、いかに総量規制の実施がこの業界に劇薬だったかよく分かります。
一方で総量規制の実施で、過剰融資や法外な金利の貸出も減少し、債務者の間に一定の効果が生まれた結果、社会も落ち着きを取り戻してきたのも事実です。
そういう意味では、総量規制は社会の安定と秩序の維持に一定の役割を果たしたともいえるでしょう。
総量規制では貸金業者に一定のサイクルで債務者の信用情報をチェックすることを求めている
貸金業者は、2020年現在も総量規制を受けており、常に利用者の融資残高に注意を払っておく必要があります。
たとえば貸金業者では、新規にローンの申込を受け付けた場合、あるいは融資実行後も、定期的に加盟する指定信用情報機関に信用照会しています。
そして総量規制の運用基準に則り、きちんと融資額が決められた範囲内に収まっているかどうか、チェックすることが義務付けられているんです。(通常1~3ケ月サイクルごと)
このチェックで、もし利用者の貸付総額が年収の3分の1を超えていることが分かった場合、貸金業者はすぐに利用者の借入額を利用者の年収の3分の1以内に納める対策を取らねばなりません。
例えば、カードローン会社は利用者のカードローンの限度額を減らしたり、利用者に総量規制内になるまで返済してくれるように促したりするようですね。
総量規制には対象外として除外と例外の規定がある
総量規制には対象外となる貸金の項目が決められています。
それらは一般的に「総量規制の除外と例外」と呼ばれています。
そこで以下では「除外」と「例外」の意味の違いを解説しながら、どのような項目があるのか具体的に見ていきましょう。
なお、この除外及び例外の項目については、消費者金融業者が加盟する貸金業者の代表団体である日本貸金業協会の公式サイトから引用しました。
総量規制の除外と例外
総量規制「除外の貸付」とは、そもそも最初から総量規制の対象とならない貸付をいいます。
除外項目としては主に以下の8つが該当します。
(貸金業法施行規則第10条の21第1項各号)
※1金融商品取引業者とは、証券会社や投信等運用会社などが該当しますが、これらの機関からの借入は、金額が500万円超える場合、総量規制の対象から除外される
※2貸金業者から個人が媒介会社を通じて資金を借りようとした時、媒介会社と個人の間にまず媒介契約が結ばれることがあります。
しかしこの媒介契約自体は貸金契約でないので、総量規制からは除外されます。
媒介会社を通じても、実際に個人が借りれば法人→法人→個人という融資形態になり、貸金業者が個人に貸付することになり総量規制の対象となってしまうため注意が必要です。
では、もう一つの総量規制「例外の貸付」とは、融資総額が「例外」的に年収の3分の1を超えていた場合でも、金融業者がその部分について、本人の返済能力があると判断すれば、貸付ができるものをいいます。
たとえば年収300万円の人が100万円借りていた場合、総量規制上はすでに3分の1となり貸金業者から追加の借入はできません。
ただ、緊急に医療費として本人があと20万円借りたいと金融会社に申し出た場合については金融会社の判断で、総量規制の「例外」として実際に貸付を実行するケースなどです。
例外項目としては以下の5つがあります。
(貸金業法施行規則第10条の23第1項各号)
※3預金取扱金融機関とは、銀行、信用金庫等の金融機関のことですが、銀行から融資を受ける時に審査等が長引き、必要な資金が間に合わない時があります。
このような場合、「つなぎ資金」として他の貸金業者から借りる融資は総量規制の例外になります。
総量規制外のカードローンと「例外」貸付のデメリットと対策
総量規制外の除外項目、例外項目を確認してもらったので、いよいよ総量規制外のカードローンのデメリットについて解説します。
上記の除外項目および例外項目を見ると、まず除外項目ではカードローンと関係した項目がありません。
一方、例外項目の中にはカードローンと深く関係するものがいくつかあり、そこで以下の章では、その例外項目を取り上げて、そのデメリットを中心に詳しく説明します。
顧客に一方的有利となる借換え(借り換えローン、おまとめローン等)
総量規制外のカードローンには、このような「顧客に一方的有利となる借換え」として、借り換えローン、おまとめローン等の利用方法があります。
以前は銀行カードローンも、このような借り換え・おまとめローンとしての使い方もできました。
しかし2017年4月以降銀行カードローンも過剰融資との批判を受けて、自主規制の動きが強まり審査も厳しくなっています。
そのため以前に比べて借り換え・おまとめ目的には使いにくくなっているのも事実です。
ですので、年収の3分の1を超える複数借入のおまとめ(借り換え)をするとなれば、基本的に消費者金融業者で総量規制の例外となっている借り換え・おまとめローンを使うことになります。
ただしこの借り換え・おまとめローンを利用する場合、以下3つのデメリットに注意しなければなりません。
▼デメリットその1
借り換え・おまとめローンを利用すると、複数の借金をまとめるので、審査がさらに厳しくなり、そもそも審査に通らない可能性がある。
▼デメリットその2
借り換え・おまとめローンを利用すると、借り換えローンは返済専用ローンなので、借りた消費者金融では当面追加の借入をすることができなくなる。
▼デメリットその3
借り換え・おまとめローンを利用しても本人の信用状態によっては逆に適用金利が上がり、支払い負担が増える場合もある。
このようなおまとめで、逆に支払総額が増えてしまうデメリットを避けるために、各業者の借入金額毎の適用金利を把握しておく必要があります。
例えば、100万円を超える借入に対しての上限金利は15%と貸金業法で決められています。
なので自分の借入金額が合計100万円を超える場合は、借入をまとめた方が金利が低くなり総返済額が減るケースが多いです。
本人と配偶者と併せた年収の3分の1以下の貸付
この例外貸付は、一般的に「専業主婦(主夫)に関する配偶者貸付制度」と呼ばれています。
要するに、本人の収入が少ないか、全くなくても、配偶者に一定の収入があれば、この制度の下では、合算して年収の3分の1以下までは融資ができるという制度です。
しかし、筆者の把握している範囲では、この配偶者貸付制度を導入しているところは消費者金融業者ではまず見当たらず、特に大手消費者金融でこの制度を入れているところは全くありません。
所得の確認や配偶者のチェック等、必要な書類も多く、融資額に対して手続きで煩雑すぎる点が制度を導入しない主な理由です。
もともと総量規制では、収入のない対象者には貸出を禁止しています。
消費者金融では収入ゼロの専業主婦(主夫)には融資ができないし、さらに大手消費者金融では「配偶者貸付制度」も導入していません。
そのため結局この制度があっても、専業主婦(主夫)は消費者金融ではカードローンが借れないということになります。
収入がない人が借入をするためには、本人がまずパート・アルバイトなど仕事に就いて、一定期間働いて「安定した収入」を確保したのち、消費者金融業者にカードローンを申込するしか方法はありません。
また銀行カードローンについても、最近は一定金額以上の希望限度額には所得証明書の提出が必要になってきています。
そのため今のところ、収入ゼロの専業主婦(主夫)でもカードローンを利用できる銀行もありますが、銀行業界全体の自主規制の方向性を考えると消費者金融同様、段々と収入のない対象者への審査は厳しくなることが予想されます。
それだけに対策としては、無職の人もやはり収入を得ることを優先して、何らかの仕事に就くことが一番です。
個人事業主に対する貸付
総量規制は個人に貸付限定されているので、個人事業主に対する融資も総量規制の例外貸付になっています。
しかしいくら例外といっても個人事業主は安定した収入のある会社員等に比べると、消費者金融から信用がありません。
個人事業主は法人と比べても事業規模が小さく、景気にも左右されやすいので売上や所得のブレが大きいです。
いくら総量規制対象外のカードローンとして借入できたとしても、希望通りの条件で借入できるとは限りません。
さらに個人事業主の場合、個人のカードローンに比べても、審査書類が確定申告書や事業概要書、事業計画書や資金繰り表まで用意しなければならないなど手間も多いです。
個人事業主の場合はこれが大きなデメリットになります。
しかし幸いなことに、大手消費者金融では個人事業主向けに、総量規制の例外貸付の融資商品として別に専用ローンを作り販売しています。
そのため個人事業主もこの専用ローンを利用すれば消費者金融業者も総量規制に縛られず、本人の事業所得に基づき独自に審査できるので、場合によってはうまく希望通りのカードローン限度額を作ることができるかもしれません。
たしかに審査には多くの種類を用意しなければなりませんが、同じ借れるなら、個人事業主はこのような専用カードローンを申込したほうがいいと筆者は考えています。
ただし同じ大手消費者金融でも、銀行系消費者金融であるアコムやSMBCコンシューマーファイナンス・プロミスと、独立系のアイフルでは、専用ローンの商品内容に差があります。
アコムやSMBCコンシューマーファイナンス・プロミスの事業者ローンは、融資対象を個人事業主に限定しており、アイフルは法人・個人事業主とも使えるので、利用者は審査対応も含め、自分に合った業者を慎重に選ぶ必要があります。
ビジネスローンと総量規制の関係
ここからは総量規制の除外・例外貸付から少し離れて、それ以外の総量規制外のカードローンについて、そのデメリットと対策を考えてみます。
法人への事業融資(ビジネスローン)もまた総量規制対象外の商品です。
法人に事業者ローン(ビジネスローン)を販売しているビジネスローン会社には、貸出形態として証書貸付の他に、カードローン形式で融資している先があります。(アイフルビジネスファイナンスなど)
カードローンは、銀行融資に比べて審査基準も低く審査の時間が早い、必要な書類も少ないなどメリットもありますが、金利が割高で長期の貸出には向かないというデメリットもあります。
カードローンを利用する場合、あくまで運転資金やつなぎ資金等、必要に合わせて短期の利用にとどめて日頃はできるだけ使わないように、金利の節約に努めねばなりません。
また法人がこのビジネスローンで融資を受ける場合、その法人代表者が連帯保証人にならなければなりません。
個人事業主がビジネスローンで融資を受ける場合、連帯保証人が不要になっていることと比べると法人の融資は条件面でやや不利であり、これもデメリットのひとつといえます。
中小消費者金融業者は総量規制対象
大手消費者金融同様、中小消費者金融のカードローンも総量規制の対象になっています。
総量規制外のカードローンとしては取扱いしてくれません。
そのため審査では、他の消費者金融業者のカードローン枠やその他のローン、信販・クレジットカード会社発行のクレジットカード・キャッシング枠と合算して与信枠を計算されます。
ただ、中小消費者金融に申し込んだ場合、なにより問題なのはその審査通過率の低さです。
個人がカードローンを借りる場合、銀行や大手消費者金融で申し込みした後にその結果を見て中小消費者金融に申し込みしてくる人が多いです。
しかし中小消費者金融業者が申し込みを受け付けた段階では、すでに申込者が申込ブラックとなっている可能性もあります。
申込ブラックとは、カードローンの申込をたとえば1ケ月以内に3~4社以上、複数申し込みするケースをいいどのカードローン会社にも嫌われている行為です。
しかし中小消費者金融では、そのような顧客をすべて排除していてはそもそも仕事にならないので、まずは申込ブラックの申込者でも一度は受付し、審査の結果落とすということになります。
それが中小消費者金融の審査通過率が、低いと言われている原因のひとつでしょう。
大手消費者金融の審査通過率が4割以上となっていることと比べても、中小消費者金融で審査を通るためには本人の信用状態が良いこと、現在仕事に就いて安定した収入があることなどが最低限の条件だと考えています。
闇金業者にとって総量規制など法律系は関係ない
闇金業者というのは、無登録で法外な金利で金貸しをやっている貸金業者で、当然総量規制など無視してやっていますから、完全な違法業者です。
違法でやっているので、厳格な意味で言えば、闇金業者の貸金も総量規制外の貸金です。
しかしいくら総量規制外のローンだからといって、ろくに調べもせずに闇金業者とコンタクトを取るほど危ない行為はありません。
さらに危険なことに、中小規模の貸金業者の中には、正当な業者を装って、このような違法な闇金業者が紛れている可能性は十分あります。
またこのような業者は、総量規制など無視して営業しているので、それをいいことに、「ブラックOK」「即日融資可」「総量規制対象外」など、いかにも利用者が飛びつきそうな宣伝文句を前に出して商売しています。
しかし一旦闇金から借金してしまうと、トイチ(10日で1割の金利)、トサン(10日で3割)という言葉があるように、短期間で恐ろしいほどの法外金利で返済を迫ってきます。
読者にはくれぐれも闇金業者には関わらないよう、筆者としても強くアドバイスしたいと思います。
また中小消費者金融でお金を借りる場合、正式な貸金登録業者であるかどうか、金融庁や日本貸金業協会の公式サイトで調べられるので、確実に調べてから慎重に利用されるようおすすめします。
銀行カードローンも総量規制並みの自主規制をしている
ここまでにも何度かお伝えしている通り、総量規制とは無縁と思われていた銀行カードローンも、総量規制と同じレベルの、年収による貸付額の規制を行っています。
金融庁が2019年9月に発表した、銀行カードローンフォローアップ調査結果によれば、銀行カードローンを取り扱う120行のうち114行が、利用者の年収に応じて貸付額の規制を行っていることがわかりました。
年収の2分の1を上限に設定している銀行が83行、年収の3分の1を上限に設定しているのが14行です。
どうやら、銀行カードローンが消費者金融カードローンで借りられなくなった方の受け皿だった時代は、過去のものになりそうですね。
まとめ
総量規制は、貸金業者が利用者の年収3分の1以上の金額を貸してはいけないと定めたルールです。
そもそもこのルールは、自分の返済能力を超えた金額を借りてしまわないようにと作られたもの。
カードローンを利用するにしても、「自分の年収の3分の1が適切な金額なんだ」と言い聞かせて、その範囲内でやりくりできるように計画を立ててください。